EDとは
男性の性機能障害とは、男性の性行為、性欲の発現・陰茎の勃起・性交・射精・極致感(オーガズム)という過程のうちのいずれかが障害されるものをいいます。このうち、性交の際に有効な陰茎の勃起が得られないため、満足な性交が行えない状態のことを「勃起不全 (ED:Erectile Dysfunction)」と呼んでいます。厳密には正常性交の機会の75%以上で性交が行えない状態が勃起不全であると定められています。
勃起のメカニズムと勃起障害の分類について
陰茎の海綿体内に血液が流れ込み、それと同時に流出路が閉ざされて血液が陰茎内に高圧に充満することで、陰茎の伸展と硬直が引き起され、勃起がおこります。その障害は次のように分類され、様々な原因が関係します。
1.機能性勃起障害
職場や家庭内などの心理的ストレスから引き起される「心因性勃起障害」、統合失調症やうつ病などが原因とされる「精神病性勃起障害」などがこれに分類されます。
2.器質性勃起障害
陰茎自体の構造に問題がある陰茎性勃起障害、脳から陰茎までの勃起に関する神経が障害されて起る神経性(中枢性・末梢 性)勃起障害、陰茎の血管に問題があり、陰茎に血液を十分満たすことの出来ない血管性(動脈性・静脈性)勃起障害、男性ホルモンのみならず脳下垂体や甲状腺の働きの障害で種々のホルモン分泌に異常を来たすことが原因となる内分泌性勃起障害などがあります。
3.その他
糖尿病や肝腎疾患、高血圧症治療薬とか前立腺癌や精神疾患に対する薬剤、骨盤や尿道の外傷(医原性)、加齢なども、勃起障害の原因となります。
診断について
まず問診を行って、勃起不全の程度、その契機や状況を確認します。国際勃起機能スコア5(IIEF-5)という問診表が世界各国で広く使用されており、これを用いて勃起障害の程度を客観的に評 価します。早朝勃起の有無や、自慰での勃起や射精の可否、パートナーとの関連も注意が必要な点です。
また、仕事を含めた日常生活の状況、生活習慣、喫煙・飲酒状況、これまで行ったことのある手術、現在かかっている病気や飲んでいる薬などを把握することで、勃起障害の原因を絞り込んでいきます。 必要に応じて、診察、採血検査、神経・血管系の検査、勃起機能検査を追加し、前の項で述べた器質性勃起障害の原因を探っていきます。実際に勃起障害治療薬を使用して、機能性か器質性か判断することもしばしば行われています。
治療について
機能性勃起障害のうち心因性のものについては、基本的に陰茎自体の勃起させるメカニズムは障害されていないため、精神神経科や心療内科と協力しながら、心理・行動療法、抗不安・自律神経調整薬投与を中心に治療していきます。
器質性勃起障害においては、薬物療法が中心となります。性的刺激を受けると、陰茎海綿体内の神経末端から伝達物質の一酸化窒素(NO)が放出されます。これが血管拡張物質のサイクリックGMPの生成を促進させて、陰茎海綿体静脈洞内に血液が充満し、勃起が起こります。このサイクリックGMPを分解する酵素がPDE5と呼ばれるものですが、このPDE5の働きを妨げることで勃起状態を増強・維持させようというのが、この薬のねらいです。
現在、国内では「バイアグラ」「レビトラ」「シアリス」の3種類の治療薬が認可・使用されています。非常に手軽に服用が出来、効果も期待されるものですが、重篤な低血圧を引き 起す可能性のある、併用してはいけない薬剤があるので、処方・服用にあたっては、担当医と十分相談して使用する必要があります。これらの薬剤が使用できない方々には、漢方薬やビタミン製剤、代謝・微小血流改善剤などの投与も行われていますが、十分な効果は得られにくいようです。
男性ホルモンの低下が原因である内分泌性勃起障害の場合には、定期的に男性ホルモンを注射で投与する治療もあります。 陰茎根部をバンドで締めつけてから陰茎にシリンダーを被せて陰圧をかけて勃起させる陰圧式勃起補助具や、陰茎海綿体内にPGE1という薬剤を注射して勃起を促す方法もありますが、いずれも保険適応外の処置です。
手術療法ですが、血管性勃起障害に対しては、動脈血行再建術や静脈結紮術が行われることがあります。また、全ての治療が効果無いという最終段階の状況においては、陰茎海綿体内にプロステーシスという器具を埋め込む治療も行われています。