その他血液浄化方法
その他の血液浄化療法
血液浄化といってもその方法・種類は多種多様です。
当院では、透析療法以外にも様々な血液浄化療法を行っています。
血漿吸着療法
吸着療法とは、吸着の原理を応用して体内、血中に存在する種々の病因物質を除去する方法でその病因物質が吸着可能で、かつその病因物質を取り除くことによって病気が改善する可能性がある疾患に対して施行されます。
「血漿吸着」とは、血液を血球成分と血漿に分離し血漿のみを吸着器に流して不要な物質を除去した後、血液とまぜてから体内へ戻す治療法です。
当院では、血漿吸着療法の中でもLDL吸着療法と免疫吸着療法を行っております。
LDL吸着療法
LDL吸着療法、あるいは「LDLアフェレーシス」といわれ、
血漿中の過剰なLDLを吸着除去し、高脂血症およびその合併症を予防する治療法です。
LDLとは Low density lipoprotein の略で、日本語では、「低密度リポタンパク」と呼ばれるものです。
このリポタンパク質は、血中のコレストロールがアポリポタンパク質と結合したもので、いわゆる悪玉(LDL)コレストロールのことです。
このLDLコレストロールには動脈硬化を促進させる働きがあるため、その値が高い状態が続くと、心臓の動脈が細くなって虚血性心疾患、すなわち心筋梗塞が起こったり、脳の動脈がつまって脳梗塞を起こしたりすることになります。
適応となる疾患
- 家族性高コレステロール血症 (FH)
- 薬剤投与によっても高脂血症 (総コレステロール : 220mg/dl、あるいはLDLコレステロール : 140mg/dl) が持続している場合
- 閉塞性動脈硬化症 (ASO) : Fontaine II度以上
- 難治性ネフローゼ症候群(特に巣状糸球体硬化症[FGS])
免疫吸着療法
自己免疫性神経・筋疾患(重症筋無力症、
多発性硬化症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ギランバレー症候群)を対象に、血漿分離器によって全血から血漿を分離し、血漿吸着器を用いて抗アセチルコリンレセプター抗体を選択的に吸着する治療法です。
白血球除去療法(LCAP療法)
LCAP療法はポリエステル製不織布(膜)を充填した白血球除去器であり、体外循環によって患者末梢血液から炎症細胞や免疫担当細胞を除去することにより病態の改善を図る治療法であります。
膜には顆粒球、単球はほぼ100%、リンパ球と血小板はそれらの活性化程度により30~60%が吸着されます。
片方の腕などの静脈から血液を抜き出し、膜で主に活性化した白血球(顆粒球・単球・リンパ球)を除去し、浄化された血液を反対側の静脈へ戻す治療法です。
本来白血球は病原体などから身を守り、免疫機能において重要な役割を果たしているのですが、この免疫機能の異常により自己の組織を攻撃、炎症を引き起こし、骨破壊・潰瘍形成などを招きます。
健康保険適用
潰瘍性大腸炎に対して2001年10月、
慢性関節リウマチに対して2004年4月から適用となっています。
顆粒球除去療法(GCAP療法)
GCAP療法は、セルロースアセテート素材のビーズ(顆粒球・単球除去器)が、その表面に顆粒球と単球が約30~50%吸着され(活性化されたものがより高率に吸着)、リンパ球や血小板はほとんど吸着・除去されないのが特徴です。
片方の腕などの静脈から血液を抜き出し、ビーズ表面で白血球のうち顆粒球および単球を選択的に吸着し、浄化された血液を反対側の静脈へ戻す治療法です。
顆粒球は白血球の中の1つで、元来は外から入ってきた細菌やウィルスなどから体を守る、生態防御として大切な役割をもった血球です。
しかし、炎症性腸疾患の患者さんの腸には、白血球(特に顆粒球)が集まり、本来守るべき自分の体の一部である腸を攻撃します。
この状態が潰瘍を悪くしたり、治りを遅らせたりします。
健康保険適用
潰瘍性大腸炎に対して2000年4月、クローン病に対して2009年1月から適用となっています。
また全身治療を必要とする膿疱性乾癬の治療選択肢として
2012年10月から適用となりました。
吸着式血液浄化(エンドトキシン吸着)
エンドトキシン血症に伴う重症病態あるいはグラム陰性菌感染症によると思われる重症病態の改善を目的とする治療法です。
1クールの体外循環時間は原則として2時間で、2回までの治療が可能となっています。
適応となる疾患
- エンドトキシン血症であるもの、またはグラム陰性菌感染症が疑われるもの。
- 下記の項目1~4のうち2項目以上(重症病態)を同時に満たすもの。
- 体温が38度以上、または36度未満
- 心拍数が90回/分以上
- 呼吸数が20回/分以上、
またはPaCO2が32mmHg未満(4,3kPa) - 白血球数が12,000/mm3以上
若しくは4,000/mm3未満、
または桿状核好中球が10%以上
- 圧剤を必要とする敗血症性ショックであるもの。
ただし、肝障害が重症化したもの(器ピリルビン10mg/dL以上かつヘパプラスチンテスト40%以下であるもの)を除く。
腹水濾過濃縮再静注法
ガンや肝硬変などによって溜まった胸水や腹水をバッグに抜き出し、その後濾過器を用いて細菌やウィルスまたは白血球成分を除去した後、濃縮器で溶液(有用タンパク)を濃縮して、再び体内に戻す治療法です。
(胸水や腹水を抜いて捨ててしまうより、栄養状態の低下を防ぐことができます)
適応となる疾患
- 難治性胸水・腹水症
- 低アルブミン血漿