アイコン:閉じるボタン

病気について知る

副甲状腺疾患

2023年11月09日

副甲状腺は、機能が進みすぎたり(副甲状腺機能亢進症)、機能が低下したり(副甲状腺機能低下症)してカルシウムの代謝が正常に行えない場合があります。副甲状腺が腫大してくると、血液中の副甲状腺ホルモンが上昇し、さらにカルシウム値が高くなり、腎尿路結石や骨粗鬆症になり骨痛、骨折などをひきおこします(原発性副甲状腺機能亢進症)。また、長期間に及ぶ透析療法により副甲状腺が腫大し、骨、関節、筋肉などに病変をひきおこす場合もあります(腎性副甲状腺機能亢進症)。

副甲状腺とは

副甲状腺は、甲状腺に比べてあまりなじみの無い臓器かと思いますが、副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌して、体内のカルシウムやリンのバランスをとる非常に重要な役割を担っているものです。このホルモンのバランスが崩れると、皮膚の痒み、倦怠感、食欲不振、筋力低下など様々な症状が出現し、胃潰瘍や骨粗しょう症、骨折、尿路結石症を引き起すこともあります。

副甲状腺と副甲状腺ホルモンについて

副甲状腺の一つの大きさは、米粒よりやや小さい位のもので、甲状腺の裏側の四隅に一個ずつ(人によって位置が違ったり、時に多くあったりしますが)あって、副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌しています。この副甲状腺ホルモンは骨、腸管、腎臓に作用して、血液中のカルシウムとリンの濃度を一定に保つという重要な役割を担っています。

副甲状腺機能亢進症とその症状について

何らかの原因で副甲状腺の働きが異常に亢進、すなわちPTHが過剰に分泌される状態になると、このホルモンが骨を溶かし、腸からの吸収や腎からの再吸収を促進するように働き、血液のカルシウム濃度を上昇、リン濃度を低下させます。このような高カルシウム血症の状況では、様々な症状が出現します。イライラ感や不眠などの精神症状、皮膚の痒み、悪心・嘔吐、食欲不振、消化器潰瘍などの消化器症状、筋力低下や不整脈、骨粗しょう症や骨折を起こしたり、尿路結石の原因となったりもします。

なぜ頸部の病気なのに泌尿器科が治療にたずさわるかというと、泌尿器科に密接に関係する尿路結石症や、血液透析が必要な慢性腎不全の患者さんに、その病気が発生することが多いからなのです。再発性尿路結石症の患者さんに対して必ず採血検査を行い、血液中のカルシウム値が高い場合には、さらにPTH値をチェックして、副甲状腺の異常がないか調べます。

また、透析患者さんは、ビタミンD(腎臓で活性化され、血液中のカルシウムを上昇させるホルモン)が活性化されず、かつリンの排泄がうまくいかないため、血中カルシウムを上げ、リンを下げる作用をするPTHが、必然的に過剰分泌されるようになるのです。

副甲状腺機能亢進症は、「原発性」と「続発性」の大きく二つに分類されます。前者の「原発性」は、副甲状腺のいずれか1腺自体の腫瘍化(良性の腺腫や、稀ですが癌)、もしくは遺伝性疾患の多発性内分泌腺腫症に見られる、4腺全てが腫大する過形成と呼ばれる状態です。後者の「続発性」は、先ほど述べたような慢性腎不全で透析を余儀なくされている患者さんに発生する機能亢進症です。

透析という特殊な環境により、副甲状腺の働きが持続的に亢進状態となり、4腺全てが腫大し、PTHを過剰に分泌させることになります。そのため、骨の密度が著しく低下して、骨・関節の痛みが強くなったり、時には骨折を起こしたりする可能性も出てきます。

診断について

まず、血液検査で血中のカルシウムとPTHの値を調べます。これらの上昇を確認できたら、頸部の超音波やCT、シンチグラフィ検査にて、どの副甲状腺がどの程度に腫大しているかを調べていきます。頭部や歯槽、手指、腰椎など、溶かされやすい骨のレントゲン写真や骨密度検査を行って、治療の必要性を判断します。

治療について

血液透析を施行している続発性副甲状腺機能亢進症患者さんに対しては、リン吸着剤やカルシウム製剤、活性型ビタミンD製剤を投与する内科的治療がまず行われます。しかし、次第にコントロールがつかない患者さんが出てきます。この方々には、手術治療が必要となってきます。カルシウム・PTH値が著明に上昇している、画像上で腫大腺を確認できる、骨の変化や症状が著明であるなどが、手術適応の基準となります。

全身麻酔下に、全ての副甲状腺を摘除し、その一部を前腕の筋肉内に自家移植する「副甲状腺全摘除、および副甲状腺組織自家移植術」がその手術法です。血液透析という身体環境は続くわけですから、残した腺が再肥大する可能性が高いので、その時には局所麻酔下で再摘除しやすいように、副甲状腺組織のごく一部を前腕に植え込みます。

原発性副甲状腺機能亢進症に対しては、その状況で治療法が変わります。4腺全てが腫大する過形成の場合、遺伝的身体環境は変わらないので、続発性と同じように、「副甲状腺全摘除、および副甲状腺組織自家移植術」を行うのが基本となります。それ以外の、1腺のみが腫大する腺腫や癌の場合には、その腺のみを摘除する「副甲状腺腫瘍摘除術」を行います。

最近では、超音波検査のもと、腫大腺にエタノールを注射して組織を固定・壊死させる「経皮的エタノール局所注入療法(PEIT)」という治療も行われるようになってきていますが、周囲の重要組織の障害や、合併症、再発の問題もあり、広くは普及していないのが現状です。